冬の光にヴェールは要らない

「万桜、それ誰かに受験だから早めに辞めた方が良いって言われたの?」

「え……?」

「だって万桜は部活を引退までしっかりやりたいタイプでしょ? 諦めだって悪いじゃん」

 
予想外の言葉を吐いた杏香は、当たり前のことを言うような顔をしている。

当たり前に私がトランペットを受験だけでなく、上手くなかったから投げ出すはずがないと思ってくれている。

そんな反応は初めてで私はつい動揺してしまった。

「どうして……」

私の動揺した顔を見て、杏香は優しく笑った。

「それくらい分かるよ。二年で同じ教室になって、もう二月だよ? 今年クラスメイトで一番一緒に過ごしているのは当たり前に万桜だし!」

もし……本当にもしだけれど。

壮矢が言っていたことが嘘じゃないなら、『繋がりに期待して傷付いたら慰めてくれる』と言うのならば、私は期待してみたいのかもしれない。

だって、それ位いま胸が速なっている。

これは緊張でも、悲しいからでもない。期待だ。

ずっと前に忘れてしまっていた気がするような感覚が心の中に起こった気がした。

いつもなら潰してしまう感情を、今日は消すことが出来ない。