冬の光にヴェールは要らない

「うん、私はトランペットだったんだけれどめっちゃ才能なくてさ〜。トランペットの音とは思えない耳が痛いほどの音が鳴り響くから辞めたんだよね」

「嘘つけー!」

「あはは、バレた? 実際は受験に集中したかったんだよね。この高校にずっと行きたかったし、結構この辺じゃ難しい方じゃん? トランペットがそんなに上手くなかったのも事実だったし」

始めに冗談を入れて、その後によくありそうな理由を言う。

そうすると、人は「あ、そんなに重い理由があったわけじゃないのかな?」と思ってくれる。

中学の部活を辞めて一ヶ月もすれば、その技を私は身につけていた。そして、この会話もすぐに流れていく。そういうもの。だって、この嘘は吐き慣れている。
 
しかし、何故か杏香は不思議そうな顔をしている。