冬の光にヴェールは要らない

歩き始めて10分もすれば、顔や手が冷たくなっていく。

きっと鼻も冷えて真っ赤になっているだろう。

手袋でもしてくれば良かっただろうか。

ついマフラーだけで十分だと思ってしまった。
 
高校から離れていくうちに、同じ制服を着た生徒も減っていく。同じ制服どころか、人自体も減っていく。

 

その時……クシュン、と突然小さなくしゃみが聞こえた。

 

パッと音の方向を振り返っても誰もいないと思ったら、ドンっと足に何かがぶつかった。
 
すぐに視線をそちらに移すと、足元に五歳くらいの男の子が私の顔を見上げている。