冬の光にヴェールは要らない

放課後になっても、その日は気温があまり上がらない日だった。

まだ12月になったばかりだというのに、風は冷たくまさに冬の始まりという感じで。

カーディガンの上からコートを羽織ってマフラーをつけていても校舎の外に出れば、つい「寒っ」と声が出てしまう。
 
課題を進めてから教室を出たのに、まだ沢山の生徒が私の前を歩いている。

校舎から出て歩いていく生徒たちがどこか他人事に見えて、男女二人で歩いている生徒には「青春だねぇ、若いなぁ」と思ってしまう。

私も部活とか入れば良かったかな?
 
杏香もバスケ部に入っていて、放課後は遊べないことも多い。

『まーおっ! いつものカフェに季節限定の苺パフェ出るらしいよ』『明日の放課後に行っても良い?』

朝のやりとりを思い出す。

明日の放課後は私もこの校舎を杏香と一緒に出て、二人で道を歩いているのだろう。

「じゃあ、私も青春かな」

口に出ているか出ていないか分からないほどの声量で、そう呟いた。
 
校門を出て、毎日通る通学路を歩いていく。

バスにも電車にも乗らずに、歩いていく。

私の家と高校までの距離は、徒歩三十分ほど。

いつもは自転車だけれど、今日の朝は少しだパラパラと雪が降っていたので歩くことにした。