出がらし姫と蔑まれてきましたが、身代わりの嫁ぎ先で氷の帝王に溺愛されています。

――雪が降り止むのは二時間後だと聞いていたが、砦に到着して三〇分後には雲が風に流され、青空が見えるようになったので、少々早く出発することになった。

「さすがエオストレ王家の王女殿下だ。晴れた空と太陽を見たのは久々ですよ」

騎士団長が窓の外から話し掛けてくる。

「い、いいえ。晴れたのは偶然だと思います……」

ラーラはおずおずと応えるしかなかった。

クラウディアでも天候を操るほどの力の強さではなかった。というよりは、そこまで行くともう女神そのものである。

先ほど姉並みの強い力が出たのも、ラーラには何かの間違いか、たまたまだとしか思えなかった。

フロスト帝国の騎士たちに好感を持ってもらえたのはよかったが――。

「帝都までは距離にして四時間ほどです。ただ、ご存知のとおりフロスト帝国は吹雪が多く……。そうした際には休憩を取りますので、到着は明日、あるいは明後日になるかと」

「承知しました」

ところが、馬車が走行中吹雪はピタリと止み、青空も再び雲に閉ざされることはなかった。順調に道を進んでいき、きっちり四時間後には帝都に到着したのである。

「殿下、窓の外をご覧ください。あちらが帝都です」

外から騎士団長に促され、ラーラは恐る恐る窓から顔を出した。

「わあ……」

思わず感嘆の声を上げる。

綿密な都市計画のもとに建てられたのだろう。整然とした街並みの中にレンガ、あるいは石造りの建物が規則正しく並んでいる。ドーム型の屋根の壮麗な神殿もあれば、円形の劇場も、商店と思われるものもあった。

「すごい……」