「世那くん」
夢から覚めるような、そんな声だった。
ふと世那が立ち止まる。
目の前には虚ろな瞳で、私たちを見つめる桜木先輩の姿があった。
(前にも、こんな事があったなぁ…)
桜木先輩を見るのも久しぶりに感じる。
他人事のように思う私とは打って変わって、世那は恐ろしいほど冷めた瞳で桜木先輩を見つめる。
「……前に言わなかったっけ?次俺達の目の前に現れたらタダじゃおかねーって」
「ふふ、ふふふふっ、私ね、世那君と話したいことがあって来たの」
「俺はねーよ、さっさと消えろって」
「世那君、また私と付き合って?また"あんなこと"しましょ?」
不気味に笑い続ける桜木先輩が怖かった。
世那は嫌悪感で満ちた表情で桜木先輩を睨みつけると、私の手を離しスタスタと桜木先輩の側まで歩いた。
そして、腕を乱暴に掴みあげるとまるで脅すような口調で桜木先輩に食ってかかった。
「世那…っ、」
「執拗いんだよ、地雷女。つべこべ言わずさっさと消えろつってんだろ」
「ふふふふふふふっ、ふふふふふ、世那君、その子、遊びで一緒に居るだけなんでしょう?私、知ってるの」
ドンッと鈍い音が響く。
通学バッグが地面にドサッと叩きつけられ、桜木先輩もバランスを崩したように地面に倒れ込んだ。
世那が桜木先輩の肩を思い切り押したんだ。



