「へぇ、真堂って噂を聞いても山吹夕香里のこと嫌いにならないんだ」
「ならないね。俺には関係ないし」
「でもあれが本当なら幻滅するでしょ、普通」
「まぁ、本当ならそりゃ幻滅する奴もいるだろうな」
「その言い方からして、真堂は本当だったとしても幻滅しないってわけ?」
「う〜ん、どうだろうな?本当ならそれはそれで面白そうだけど」
ケラケラと笑う真堂に心が軽くなる。
真堂って私が思ってるよりも100倍いい人なのかもしれない。
真堂の言葉一つ一つに涙が溢れそうになるなんて思ってもみなかった。
物陰で感傷に浸っていると、唐突に水瀬ちゃんの声が廊下に響き渡った。
「ちょっと!アンタ三木雫でしょ!?また真堂に絡んでなに企んでんのよ!」
「うわ、めんどーなの来たわ…"チワワ"ちゃんはお呼びじゃないんだけど」
「アンタの方がよっぽどお呼びじゃないわよ!真堂!早くこっち来て!」
そう言って水瀬ちゃんは真堂を引っ張って、彼女の前から姿を消した。
ブロンドヘアーの彼女……三木雫は、真堂達の後ろ姿をジッと見つめたあと、確かに舌打ちをして、その場を後にした。
なんで彼女が私の噂を真堂に話していたのかは分からない、けど、なにか妙な違和感を感じる。
まるで、気付いてしまったら後には戻れない、そんな違和感が。
「いいや、なんでも…」
そんな事はどうでもいい。
知らなくていいことは知らないままでいい。
今はただ、真堂や水瀬ちゃんが味方でいてくれることの方が大事なんだから。
5組に進む足を止め、ゆっくりと誰も居ない空き教室へと歩を進めた。



