「せ、世那……」
震える口で世那の名前を呼ぶも、世那には私の声なんて届いていないようだった。
「これ以上俺はなにを言や良いんだよ!俺はちゃんと伝えてんだろうが!!」
「…………」
「………そうだな……俺は………俺は、きっと、世那に相応しくない人間なんだ……」
甲斐君の言葉を聞くと、世那は目を見開き固く口を閉ざした。
そして、表情が抜け落ちたようにガラリと顔色を変えるといつものような気だるげな顔で私に向き直った。
「じゃ、帰るか」
「……えっ!?い、良いの?」
「なにが?」
「いや甲斐君との話!まだ終わってないんじゃ…」
「今終わった。だから帰るぞ」
先程までのことなど嘘のように、いつも通りに私に告げた。
そして、甲斐君に背を向け世那は校門に向かう。
「か、甲斐君も良いの!?」
「……良いんだ。元々、世那は俺に期待してなかったみたいだし…」
「そんなの売り言葉に買い言葉……」
「俺みたいな安い人間の事なんて世那にはお見通しだったんだよ、だから、本当にもう良いんだ」
甲斐君は力無く、けれど、どこかホッとしたように笑った。
「夕香里ちゃんなら、世那の望む言葉を掛けられるさ」
「え?」
「じゃあな、夕香里ちゃん……それに、世那……」
そう言って、甲斐君は世那の後ろをジッと眺めながら目を伏せた。
私は、そんな甲斐君に何の言葉もかけられないまま、世那の後を追った。



