【完】ハルくんの、かくしごと。




「は、ハルくんそういうこと言わないじゃん」



今まで一度も言われたことない。

“別れろ”とか、“いい加減にしろよ”とかはよくあるけど。

でもそれは、私の“来るもの拒まず去る者追わず”な性格が ハルくんの性に触るんだと思う。

いろんな女の子に手を出してるハルくんも、人のこと言えないけどね?

でも、これ言うと不機嫌になるから言わない。



「例えばの話だって。どうなの?」



グイっと、また近くなる距離。

気付けば、後ろは壁。トンっと背中に当たって、逃げ場がない。



「……どうなのって、何が?」



声が震える。答えを探しても、見つからない。

壁際に追い詰められて、心臓の音がうるさくて、頭の中が真っ白になる。

ハルくんの距離は近すぎて、呼吸さえも奪われそう。

こんな距離、慣れてるはずなのに、おかしい。心臓がうるさい。



「…は、ハルくんが俺離れしろって言った」

「でも、それは無理だってこの前分かったじゃん」



そ、そうだけど…。



「…ハルくんが、彼氏作らないでっていうなら、別れるよ。 でも、ハルくんも今の彼女と別れてよ?フェアじゃないもん」



ハルくん、絶句。

その瞬間、空気が止まったみたいに静かになる。