【完】ハルくんの、かくしごと。




「夏が来るからね。熱いのを見たいの私は。千秋も読む?」

「ん~…」



少年漫画、見たことない。

喧嘩とか、そういうの得意じゃないから。



「また今度にしとこうかな~」



そう言いながら、紗里衣ちゃんの隣に座る。

最近、なんとなく全てに気が乗らない。

机にグデッと全体重を預ける。

疲れた。来たばかりなのに、もう帰りたい。


教室のざわめきが遠くに聞こえる。

紗里衣ちゃんがページをめくる音だけが近くで響いて、そのリズムに合わせるように、まぶたが重くなる。

柳くんは放課後迎えに来てくれるって言ってたな…。



頬を机にくっつけながら紗里衣ちゃんの方へ顔を動かす。



「紗里衣ちゃんは、気になる人とかいないの?」



紗里衣ちゃんは、頬杖をついて私の方を見る。



「いないな~。第一、理想高いから簡単にできないね」

「あ~。なるほど…」

「黒髪で、背が高くて、筋肉質で、顔が綺麗で、頭がよくて、運動もできて、優しいけどクールで、私のわがまま聞いてくれて、電話一本で飛んでくるような男の子」



…紗里衣ちゃん、なかなか手ごわいね? そんな男の子いるかな~。