「ハルくん、髪乾かしてっ」
胸まである長い髪は、乾かすのに相当な労力がいる。ドライヤーは重いし、腕も疲れる。
ハルくんは舌打ちしながらも、ドライヤーを受け取ってくれた。
嬉しくなって、笑いながらハルくんの前へ。カーペットに体育座り。
濡れた髪に、ハルくんの手が触れる。その感触が、気持ちいい。
「ハルくん、乾かすの上手だねぇ。美容師向いてるんじゃない?」
「終始無言の美容師なんていねーだろ」
それは確かに。
ハルくんはかっこいいのに、無口だから。
ドライヤーの音と、ハルくんの手の動き。
それだけで、怖さも不安も、少しずつ消えていった。
「でもハルくん、モテるよね」
そう言った瞬間、髪を触っていたハルくんの手がピタッと止まる。
空気が一瞬で変わる。
ドライヤーの音だけが、間抜けに鳴り続けていた。



