「手、繋ぎたいな」 ――朝。 満員電車に乗り込む、あと1分。 差し出した私の左手は、宙に浮いたまま。 隣の彼は、その手をじとっと見て、面倒くさそうに眉をひそめる。 ……あれ?聞こえなかった? いや、聞こえてるよね。 「手、繋ぎたいな」 もう一度。 今度は、はっきりと。少し大きめの声で。 彼は、ため息をひとつ。 「はいはい」 そう言って、右手を差し出した。