「ハルくんのことで、知らないことがあるのが嫌なの」
テレビの方を真っすぐ見て、そう答える。
「お前さ、」
ハルくんがリモコンの停止ボタンを押す。
画面が暗くなって、部屋の空気が少し重くなる。
……なんで、止める?
むっとした顔で隣を見ると、 じっと見つめてくるハルくん。
睨まれてるわけじゃない。でも、真剣な目。
ただ、目と目が合っている。
ハルくんの左手が、私の顔に向かって伸びてくる。
その動きが、なぜかスローモーションに見える。
停止ボタンを押した理由も、 鋭い目つきじゃない理由も、 手を伸ばしてくる理由も、 一つも分からない。
私は雰囲気とかムードとか、そういうものに鈍感で。
この時も、全く気付かなかった。ハルくんが何を思っているのか。
「ハルくん、再生ボタン押してよ」
そう言った瞬間、ハルくんはハッとしたように手を引っ込める。
「…ん」
短く答えて、再生ボタンを押す。
画面が再び動き出す。
音が部屋に戻ってくる。



