【完】ハルくんの、かくしごと。




「ちあっ…!」



私を見つけて、真っ先に走ってくる。

何年ぶりだろう――ハルくんが、私の名前を呼んだのは。
その声に胸が痛くて、涙が零れてしまう。
もう泣きたくないって、そう思っていたのに。

焦っている顔が見えて、なぜかそれに落ち着いた。
名前を呼ばれただけで、心が揺れてしまう。

ハルくんは、私の前まで来ると、躊躇いもなくぎゅっと抱きしめた。
強い力で、少しだけ足が浮く。
その温もりに、張り詰めていたものが一気に崩れてしまった。



「ハルくんっ…ハルくん、助けてっ…!」

「ちあ。大丈夫。ちゃんと、ここにいるから」

「…っ…ハルくん、キスしてっ…!上書きしてっ…!」

「…む、り。そういう関係じゃないじゃん、俺ら」

「…やだ、やだっ!ハルくんだったらいいのっ!ハルくんがいいのっ…!」

「…っ、」



もう、どうしようもなかった。怖くて怖くて、まだ足が震えている。

ぎゅっと抱きしめられて、ハルくんの高めの体温に包まれていても、怖さはなくならなかった。

ハルくんに、キスをせがむなんて、どうかしてる。
耳元で、困惑した声が聞こえる。



「ちあ…?」



でも、無理だった。ハルくんしか、この恐怖を消せない。私には、ハルくんに安心させてもらうしかなかった。