【完】ハルくんの、かくしごと。




「…っ、はっ…」



唇が離れて、必死に息をする。肺が焼けるみたいに苦しくて、頭が真っ白になる。

ずっと跨がれていて、体も動かない。でも、どうにかしてでも、逃げなきゃ。


さっき手放してしまったクッションを思いっきり、荻原くんにぶつける。



「はっ?」



不意を突かれた荻原くんがよろける。

その隙に、ドンッと胸を押して、距離をとった。乱れる息。ソファの端と端。

来ないで、欲しい。 怖くて、足が動かない。



「千秋ちゃん、泣かないんだね」

「…っ、はっ…はっ…」

「今思えば、千秋ちゃんが泣くのって、全部佐々木のせいだったな~」



何事もなかったように話し始める、この男。

私、こんな人を――ずっと優しいって、好きかもって、友達だって、そう思ってたんだ。でも、全然違った。
怖くて、怖くて、唇をかみしめる。

ソファの端に追い詰められたまま、呼吸が浅くなる。
心臓が早鐘のように鳴って、頭の中は「逃げなきゃ」でいっぱい。
でも、足は動かない。