【2.26公開】ハルくんの、かくしごと。




「ふーん。そんなもんか」



荻原くんはそれだけを言って、通話を切った。スマホをテーブルに置く音が、やけに大きく響く。

視線が、私に向けられる。その瞬間、ビクッと体が震えた。



「…や、だ…やっ…だ、」



声が震える。怖い。ただただ、怖い。

映画の音は流れ続けているのに、もう何も耳に入らない。部屋の空気が重く、冷たく、息が詰まりそうだった。

グッと、手首を掴まれて、強引に唇を奪われた。

荻原くんとしたキスは、なにも感じなかったはず。でも今は、ただ恐怖しかなくて。できるだけ顔を背ける。
震えが止まらない両手で、肩を押してみるが、ビクともしない。

浅はかだった、ほんとに。来るんじゃなかった。荻原くんは、どうしようもなく最低でクズだけど、 私の話を分かってくれていると思っていた。

でも、全然だった。

たぶん、まだどこかで―― 荻原くんは優しいし、私には手は出さないとか、そこまでクズじゃないはずだって、思ってたんだと思う。

ハルくんへの恋心を自覚する前は、こんなキス、なんとも思わなかった。でも、気持ちを自覚してからは違った。ハルくんとしか、したくなかった。ハルくんとじゃなきゃ、意味がなかった。

だから今は、ただ恐怖しかなくて。
心臓が痛いくらいに、拒絶の気持ちでいっぱいだった。