【完】ハルくんの、かくしごと。




季節は冬。もうそろそろ雪が降る時期になってきた。

一人で電車に乗るのも、だいぶ慣れたと思う。
満員電車でも押しつぶされることはないし、汗のにおいもほとんどしなくなって、香水だけが漂う。
幾分、ましだと思う。

左手をポケットに突っ込みながら、電車を降りる。
寒いなと思い、マフラーに顔をうずめる。

駅前の風は、思った以上に冷たかった。吐いた息が白く広がって、すぐに消えていく。


ふと、顔をあげると、目線の先。

私よりも、頭一個分以上高い身長。 黒のマフラー。

見て、見ぬフリ。

ぎゅっと唇をかんで、歩く速度を緩めた。

ばれたくない。


最近、やっと落ち着いてきた。

前みたいに毎日のように泣かなくなったし、無理して笑うこともなくなった。

こうやって、日常が変わっていくんだな――そう思う。


私よりずっと前を歩くハルくんの背中を見ながら、白い息を吐いた。