【完】ハルくんの、かくしごと。




それからの毎日は、まあ、酷かった。

家にいるときも、学校にいるときも、ずっとボーッとして。
気づくとハルくんのことを考えていて、無意識に涙が出ていた。

食事中にも泣いてしまうものだから、お母さんとお父さんに心配された。
「なんでもないよ」と笑顔を振りまくのも、もう疲れてしまった。

理由を話さない私を心配して、お母さんが学校を休ませてくれたりもした。
一人で、ずっと布団の中にうずくまっていた。
でも、考えてしまう。涙が止まらなかった。



そんな私がトドメを刺されたのは、少し肌寒くなってきた季節のころ。

放課後の帰り道。

嫌なものを、見た。久しぶりに姿が見えたと思ったら、私の知らない女の子と一緒にいる。
ずっと前に見た記憶と重なる。

玄関の扉をあけて、入るよう促すハルくん。
私には、気づいていない。

何をしてても、ハルくんのことを考えてしまう。
そのたびに、一人で泣いた。 紗里衣ちゃんといるときにだって、泣いてしまった。

もう泣きはらしたと思っていたけれど、そんなことなかった。

ポロっと右目から涙がこぼれる。

ガチャン、と絞められた玄関の扉。私だけが、残されている。



「ハルくん……私、泣いてるよ。助けてよ……」



嫉妬して気が狂いそうな気持ちと、ズキズキと胸が痛くて消えたい気持ち。

全部がしんどくて、ハルくんと過ごしたあったかい記憶までも忘れてしまいそうだった。

記憶は、私を支えてくれるはずなのに。今は、逆に突き刺してくる。

笑った顔も、声も、匂いも――全部が痛い。