【完】ハルくんの、かくしごと。




「別れたとき、意地悪しちゃったから、今話聞いてあげるよ」



柳くんは、そう言って笑った。

なんで私は、この人を好きになれなかったんだろう。荻原くんとは、また違う優しさがある。

多分、ちゃんと私のことを好きでいてくれた。私のことを、大切にしてくれた。

こんな人、なかなかいないのに。

柳くんは、私の背中をさすりながら、黙って話を聞いてくれた。

その手の温度が、安心をくれる。でも同時に、胸の奥が痛む。



「……柳くん」



名前を呼ぶだけで、涙がにじむ。

振った相手に泣きついている自分が、情けない。でも、柳くんはやっぱり優しかった。どこにいても、変わらない。


何も言わずに、時々「うんうん」とうなずいてくれた。

でも、「荻原くんのこと、好きになってて」といった瞬間――



「それ、ほんとに好き?」



背中をさすっていた柳くんの手が止まった。



「一緒にいるとドキドキするし……キスも嫌じゃないし……」



必死に言葉を並べる。でも、柳くんは静かに問い返した。



「佐々木は? 佐々木だったらどうなの」



な、なんで。 なんでここでハルくんが出てくるの?