【完】ハルくんの、かくしごと。




「……っ」



たまらず立ち上がって、教室を飛び出した。

後ろから、「千秋!」と紗里衣ちゃんの叫び声が聞こえる。

でも、振り返らない。ずっと走った。

一人になりたかった。一回、落ち着きたい。冷静になりたい。

でも、一人になったところで、わかるわけでもない。 どうしたら、いいの?


廊下を走っていると、曲がり角から出てきた人にぶつかって、尻もちをついてしまった。



「いっ……」

「ごめん、大丈夫?」



差し出された手を握って、立ち上がる。

顔をあげると、柳くんだった。



「なんで、そんな顔してるの?」



優しい声に、泣きそうになる。

柳くんは、そんな私を見て、手を引っ張って近くの空き教室に連れて行ってくれた。



「櫻井、どうしたの?」

「わ、かんないっ……私、ずっと柳くんの言ってたことが、わかんないっ……」



振った相手に泣きつくなんて、どうかしてる。


空き教室の静けさが、余計に胸を締めつける。

窓から差し込む光が、柳くんの横顔を照らしていた。その優しさが、苦しい。



「……櫻井」



名前を呼ばれるだけで、涙がこぼれそうになる。