【完】ハルくんの、かくしごと。




「さっき駅で一緒にいるの見たから。 佐々木のこと好きなのかと思ってたけど、違うんかー」



その言葉が耳に入った瞬間、ドッと汗が吹き出した気がした。

一番聞きたくなかった。



「手繋いでたように見えたし、結構お似合いだったな」


「……へー」



どうでもいいよ、もう。そんな話、俺にしてくんなよ。

心臓が痛いのに、顔は無表情を装う。

汗がじわっと背中を伝って、ペンを握る手が震える。



「佐々木は、好きじゃなかったん?」



その問いに、心臓が一瞬止まった気がした。



「……はあ?ただの幼なじみだから」



なんでもないようなフリをして、そう答える。声は平静を装っていたけど、喉の奥が震えていた。



「……佐々木、体調悪い?」


「……っえ?」


「なんか、泣きそうな顔してる」


「……だ、いじょぶ」



大丈夫じゃねーよ。どこがだよ。

心臓は痛くて、呼吸は浅くて、ノートの文字は滲んで見えなくなる。


ちあの笑顔も、声も、手の温もりも。17年間の思い出、全部、消えてほしい。

全部消えてくれ。

頼むから、早く、消えて。