「彼氏できたんなら、俺の部屋来るのやめたら? お前、ここで俺にされたこと忘れたわけじゃないよな?」
「荻原くんは彼氏じゃなくて…その噂はいろいろ理由あって…」
そう言うちあに、俺は吐き捨てるように答えた。
「…俺に割く時間あったら、そいつといたほうがいいんじゃない?」
(俺のこと、見て)
心の奥でそう叫んでいるのに、口から出るのは冷たい言葉ばかり。
俺のこの醜い感情に気付いてほしくない。
(俺のこと、好きになって)
そう願ってしまう自分が嫌で、だからこそ、はやく嫌われたい。
「さっさと行けよ。一々、俺に報告しなくていいから」
冷たく言い放つ。
頼むから、俺の知らないところで勝手に幸せになってよ。
「…荻原くんのとこ行ってくる」
ぽつりと呟いたちあ。
背中を向けたその体を、思わず後ろから抱きしめた。
「…なっ、なんで」
「…はやく、行けよ」
「…じゃあ、離してよ」
やだ。離さない。
ぐっと抱きしめる腕に力を込める。
行かないでほしい。俺の隣にいてほしい。俺のこと、好きになってほしい。
全部言えたら、どれだけ楽だろうか。
幼なじみという関係は、非常にやっかいで、邪魔くさくて、意外と脆い。
ただの友達とは訳が違う。
守ってきた時間の重さが、逆に足枷になる。



