「あ、した。また、明日ちゃんとするから」
「しょうがないな。今日は、これで許そう」
ちゅって。また、頬に。
そして、またパチンって、思わず自分の頬を自分で叩く。
「かわいー」ってクスクス笑う荻原くん。
「また、明日ね」
ニコって笑って、歩いていく。
ちょっと、待ってよ、ほんとに。
その背中が遠ざかっていくのを見ながら、胸の奥がざわざわして、落ち着かない。
頬に残る温度。 笑顔の余韻。そして、心臓のドキドキ。
「……なに、これ」
思わず小さく呟いた。
なんで、こんなにドキドキしてるの? 頬が熱くてクラクラする。
どうしようもない気持ちでいっぱいになって、たまらず走り出した。
「…っ、ハルくんっ」
ハルくん。 ハルくん。助けて。 こんなの、知らない。
空いている玄関の扉。 無許可で入る。
靴を脱ぎ散らかして、洗面所に寄らず。バタバタと階段を駆け上がる。
一番奥の部屋を開ける。



