【完】ハルくんの、かくしごと。




電車に少しだけ揺られる。



「じゃ、またね」


「送ってくよ」


「…。」



スマート。何もかもが。

一緒に電車を降りる。

私の左隣。いつもとは、違う人。 違和感。ちょっとだけ、胸が痛い。 よく、分からない。



「ほんとに、ここまででいいから。今日、楽しかった、ありがとう」



素直にそういう。昨日の公園前。



「まだ、やり残したことあるでしょ」



急に、左手にちょんっと荻原くんの右手が触れる。そのまま、自然に指と指が絡む。



「これ、恋人繋ぎ。したことある?」


「…う、ん」



これは、さすがに。私も、彼氏はいたことあるから。



「じゃあ、これは?」



荻原くんは、指を絡めたまま、ぐっと手を引き寄せる。距離が一気に縮まって、胸がドキッと跳ねる。



「……な、に?」


「俺、こうやって繋ぐの、好きなんだよ」



軽い調子なのに、目だけは真剣で。



「千秋ちゃん、嫌?」



少し低い声で聞かれて、言葉が詰まる。

嫌じゃない。 むしろ、心臓が暴れ出してる。



「……嫌じゃない」



小さく答えると、荻原くんがふっと笑った。



「じゃあ、これからも、こうやって繋ごうね」


これからも、って…なに? 私たち、付き合ってるわけじゃないよね?



「お、荻原くん…このままだと、私、」


「ん?」



覗きこむように見てくる荻原くんに、ドキッとする。

なに、これ。
なんで、荻原くん相手だとこんなにドキドキするの? 顔がかっこいいから?優しいから?スマートだから?



「千秋ちゃん、顔真っ赤になってる。どうしようね、なかなか進めないね」



甘ったるい声。苦手なもののはず。



「い、一回手離して」


「やだ」


「…っ、」



だめだ、完全に荻原くんが言った通りになってる。ドキドキが止まらない。 今まで、経験したことない。