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放課後。
またしても癖でついつい、教室を出た瞬間に体が右へ傾いてしまう。
違うんだって。今日の朝、珍しく言われたじゃん。 “一緒に帰れない”って。
言われた時は、ハルくんからそんなこと言ってくれる日がくるなんて。
ほんとに、どうしたの?なんて思ってたけど。
昨日とは、まるで違う。中学生の頃に戻ったみたいなハルくん。
どういう心境の変化なのか分からないけど… 私に冷たくする理由がなくなった。
“彼女がいる”なんて、私を傷つけるためについた嘘も、あっさりバラした。
ハルくん、全然分かんない。ハルくんの、してること。
もしかしたら、明日になったらまた冷たいハルくんに戻ってるのかも。
それに今日、一緒に帰れない理由はきっと、女の子なんだろう。
あの、ベッドの上で。ハルくんじゃない香りがしたあの日。すごく、ものすごく、イラついた。
そして、今またそれを思い出してイライラしてる。
やめだ、やめ。
気付いたら、どうしてもハルくんに脳の半分は浸食されてる。
左に向かって歩き出したとき、
「千秋ちゃん」
語尾にハートマークがついたかのような甘ったるい声で名前を呼ばれて、一瞬鳥肌が立った。
「荻原くん、普通に呼んで?」
振り向くと、荻原くんが立っている。
「これから、どっか行かない?」
「…昨日、カラオケって言ってなかった?」
「断ってきたよ。千秋ちゃんといた方が楽しい」
チャラ原だ。
許可してないのに、隣を歩き始める。



