【完】ハルくんの、かくしごと。


*

*

*


放課後。

またしても癖でついつい、教室を出た瞬間に体が右へ傾いてしまう。

違うんだって。今日の朝、珍しく言われたじゃん。 “一緒に帰れない”って。

言われた時は、ハルくんからそんなこと言ってくれる日がくるなんて。

ほんとに、どうしたの?なんて思ってたけど。

昨日とは、まるで違う。中学生の頃に戻ったみたいなハルくん。

どういう心境の変化なのか分からないけど… 私に冷たくする理由がなくなった。

“彼女がいる”なんて、私を傷つけるためについた嘘も、あっさりバラした。

ハルくん、全然分かんない。ハルくんの、してること。

もしかしたら、明日になったらまた冷たいハルくんに戻ってるのかも。

それに今日、一緒に帰れない理由はきっと、女の子なんだろう。

あの、ベッドの上で。ハルくんじゃない香りがしたあの日。すごく、ものすごく、イラついた。

そして、今またそれを思い出してイライラしてる。

やめだ、やめ。

気付いたら、どうしてもハルくんに脳の半分は浸食されてる。


左に向かって歩き出したとき、



「千秋ちゃん」



語尾にハートマークがついたかのような甘ったるい声で名前を呼ばれて、一瞬鳥肌が立った。



「荻原くん、普通に呼んで?」



振り向くと、荻原くんが立っている。



「これから、どっか行かない?」


「…昨日、カラオケって言ってなかった?」


「断ってきたよ。千秋ちゃんといた方が楽しい」



チャラ原だ。

許可してないのに、隣を歩き始める。