「これくらい、許してよ」
「む、むり」
「じゃないと、この先何にもできないよ」
――この先?
この先って、なに?
「どう?ドキドキした?」
ドッ、ドッ、ドッ。
頬に。
頬に、触れたか触れてないか、分からないレベルのキス。
それなのに。
…なんで、こんなに。
「こんなことしてたら、ほんとに好きになるかもね」
チャラい。 チャラ男。こんなの、知らない。
漫画でも、見たことない。
こんなに、ドキドキしたことない。
ハルくんにキスされたときだって、こんなに…。
「俺、クズだけど。もし、千秋ちゃんが俺を好きになったら、彼女にしてあげる。特別」
最低。クズ。
私なんかより、何倍もクズだった。
こんな男と一緒だと思ってた私が、かわいそう。
荻原くんを好きな女の子は、きっといっぱいいる。その子たちも、かわいそう。
「私、荻原くんのことは好きにならない」
「そう?でも、今完全に佐々木のこと忘れてたよね?いい傾向じゃん」
――なんて、笑ってる。
なにが、いい傾向なんだよ。
「私、別にハルくんのこと忘れたいなんて言ってない」
「でも、そうしないと一生恋できないと思う。 ハルくんへの執着、俺に向けてみて。 そしたら、千秋ちゃんの心の整理つくと思うよ」
執着って。
もっと、良い言い方ないの?
でも、荻原くんの言う通り。
やっと、できる。
――ハルくん離れ。
「…私、何もかも初めてだから、ゆっくりで…」
「うん。クズ同士、頑張ろうね」
一緒にするな、と思いつつ。
あ、やっぱり苦手かも、なんて。
でも、荻原くんのおかげで今、笑えてる。



