「どうぞ」そう言って渡すと、私の顔を見て「あ」なんて声を出した。
なんだ、と思ったら――
「駅で、喧嘩してた人」
紗里衣ちゃん、吹き出してる。
ちょっと、やめてよ。
「あの、荻原くん。それは、失礼では?」
「痴話げんかでもしてたの?朝っぱらから?」
「違います。私たち、“普通”の幼なじみなので」
普通を強調。
「俺と、佐々木どっちがかっこいい?」
「え?」
ぐっと、急に近づいてきた荻原くん。
距離が一気に縮まって、心臓が跳ねる。
教室の空気がざわつく。
紗里衣ちゃんは口元を押さえて笑いをこらえている。
「顔には自信あるんだけど」
簡単に言えば、ハルくんの正反対の顔。
茶髪。柔らかい瞳。女の子みたいに血色のいい唇。
た、しかに。これは、自信をもっていい顔…だけど。
「ハルくんの方がかっこいい」
はっきりそういうと、驚いた顔をする荻原くん。
「私は、荻原くんかなー」なんて紗里衣ちゃん。



