私だって、言ってやりたかったよ。柳くんに、そうやって。
でも、言えなかったんだもん。
だって、無理やりなんて言いながらも、抵抗はできたはず。
急所蹴るとか、そういうの。
それに、泣いたら多分ハルくんはしなかった。
でも、それをしなかったのは私自身。
そして一番は…。
ハルくんとのキス、嫌じゃなかった。そう思っちゃったから。
「は、ハルくんは…彼女に言わないの?」
「彼女?」
なんでそこで質問返し?
ハルくん、思い出したように「あー…」って声を出して、訳の分からないことを言い出した。
「彼女いるって、あれ、嘘」
「…は?」
う、そ?
「だから、浮気したのお前だけ。 俺は、お前と違って好きじゃないやつとは付き合わない。 誠実なので」
にこって。あの、キスされたときと同じ顔。
意味…分かんない。
誠実? 嘘ついてたのに?
それに、彼女じゃないってことは、余計に酷いんじゃない?
やっぱり、クズ。
「なにそれ…そんな嘘つく必要あった? 私、ハルくんに彼女できたって聞いてっ、それでっ…」
「嘘ついた甲斐、あったわ」
少ししゃがんで、私と真っ直ぐ目線を合わせてくる。
いつ見ても、綺麗な顔。
綺麗だな、隣で拝ませてもらえて光栄――なんて、いつもは思う。
でも今は、この綺麗な顔が、憎い。



