野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

朝の修行(しゅぎょう)のために(はち)(みや)様は仏像(ぶつぞう)のお部屋にお(こも)りになった。
その間に(かおる)(きみ)は先日の(ろう)女房(にょうぼう)をお呼びになる。
この老女房は「(べん)(きみ)」と呼ばれて、姫君(ひめぎみ)たちのお世話役をしているみたい。
六十歳近いけれど、教養のある雰囲気で優雅に話す人よ。

「先日の話のつづきを」と薫の君にうながされて、弁の君は衛門(えもん)(かみ)様のことを語りだした。
許されぬ恋に悩んで、ついにご病気でお亡くなりになるまでのいきさつをお話しすると、弁の君はひどく泣いた。
<他人の話だとしても悲しい物語だが、実の父君(ちちぎみ)はそのようにお苦しみだったのか。長年知りたいと願っていたことを、思いがけないところで聞くことができた>
薫の君も涙をお止めになれない。