野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

「私の姫が()(そう)は、不思議となかなか上手に聞こえます。ただ、私が教えていたのはずいぶん昔のことですからね、今はそれぞれ思いのままに弾いているようです。川音に合わせた演奏では拍子(ひょうし)もずれているでしょうけれど」
謙遜(けんそん)なさってから、「弾いてごらんなさい」と女房(にょうぼう)を通じてお声をおかけになった。

姫君(ひめぎみ)たちはとんでもないとお断りになる。
「好き勝手な演奏を聞いていた人がいたというだけでも恥ずかしいのに、またあらためてお聞かせするだなんて」
とおっしゃって、宮様が何度催促(さいそく)なさってもお弾きにならない。
(かおる)(きみ)は残念にお思いになる。