野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

<いつもはひどく真面目ぶっていて、(なみ)大抵(たいてい)の女性に()かれるような男ではない。その(かおる)(きみ)がこれほど言うのなら相当な姫君(ひめぎみ)たちなのだろう>
匂宮(におうのみや)様はどうしようもなく会いたくなってしまわれる。
「どのような人たちか分かったらまた教えておくれ」
本当は今すぐにご自分でお訪ねになりたいけれど、そんな軽率(けいそつ)なお振舞いができるご身分ではない。
親王(しんのう)の身分など邪魔(じゃま)なだけだ>とさえお思いになる。

いらだっていらっしゃるのがおかしくて、薫の君はわざと真面目な顔でおっしゃる。
「いやいや、私としたことが。すぐにでも出家(しゅっけ)したいと思って恋愛などからは距離を置いておりますのに、本気になってしまったら出家できなくなります」
匂宮様はお笑いになった。
「またそうやって辛気(しんき)(くさ)いことを言う。いつまで(さと)()ましたような顔をしていられるかな」

匂宮様はご自分が恋愛好きだから、薫の君も姫君に夢中になるはずだと決めつけておられる。
でも薫の君は、さんざん匂宮様のお気を引いたくせに、姫君たちよりも(ろう)女房(にょうぼう)のほのめかしていたことの方が気になっていらっしゃる。
出生(しゅっせい)の秘密を知りたいお気持ちが、美しい姫君への関心をはるかに上回っているの。