野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

仲のよいおふたりだから、いつものようにいろいろなお話をなさって、そのついでに(はち)(みや)様の話題もお出しになった。
宇治(うじ)山荘(さんそう)姫君(ひめぎみ)たちを垣間見(かいまみ)したことなどをくわしくお話しすると、匂宮(におうのみや)様は深く感動なさる。
(あん)(じょう)だ>
と、ますますお気を引くように話をお続けになると、匂宮様はじれったくなってしまわれる。

「その姫君からの返事はどうして持ってきていないのだ。私ならきっとそなたに見せるのに」
「何をおっしゃいますやら。いろいろなところから届いている恋文を、ちらりとも私には見せてくださらないではありませんか。とはいえ私にはもったいない姫君たちですから、いつか匂宮様にもご紹介したいとは思っております。しかしどうやって宇治までお越しになりますか。私のような身分の軽い者はどうとでも動けますけれど、(とうと)親王(しんのう)様が(みやこ)からお出になるのは簡単ではございませんでしょう。

山里にはこういう思いがけない姫君がときどきいるようですね。僧侶(そうりょ)のような父宮(ちちみや)がお育てになっているということで、はじめのうちは私も、たいした姫君たちではないだろうと思っていたのです。それでお父宮とばかり親しくしていたのですが、月明かりの垣間見どおりなら、すばらしく理想的な姫君たちでございますよ」