野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

(みやこ)にお帰りになっても、(かおる)(きみ)姫君(ひめぎみ)たちのことをお忘れになれない。
<想像していたよりもずっとすばらしい姫君たちだった。垣間見(かいまみ)したお姿が頭から離れない。これでは出家(しゅっけ)などとてもできそうにないな>
ご自分の決心の弱さを思い知らされて、とまどっていらっしゃる。

姫君たちへお手紙を書こうとなさる。
恋文めいた雰囲気にしないために、厚くて白い事務的な紙をお選びになった。
上等な筆で、(すみ)濃淡(のうたん)が美しく出るようにお書きになる。
「いきなり長居(ながい)するのは失礼かと遠慮いたしまして、ゆっくりお話しできませんでした。その際に申し上げましたとおり、私は世間の男とは違う変わり者ですから、これからもどうぞ安心なさって縁側(えんがわ)までお入れください。(はち)(みや)様がいつ山のお寺からお戻りになるかを(うかが)って、そのころにもう一度お訪ねいたします」

淡々(たんたん)とした文面でお書きになった。
(ろう)女房(にょうぼう)に渡すように」
使者にお命じになりながら、
<宮様の家来が寒そうにしていたな>
と思い出して、食べ物などをたくさん届けさせなさる。