野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

正妻(せいさい)が生きておられたころでさえ()えがたい世の中だったの。
それでも健気(けなげ)なご正妻を見捨てることはできなくて、出家(しゅっけ)しないままお暮らしになっていた。
<もともとつらいことの多い人生だったが、妻に先立たれてますます嫌になった。幼い姫たちを父親だけで育てるのは、なまじ親王(しんのう)であるために世間から非難(ひなん)されるだろう。もう思いきって出家してしまおうか>
そうお考えになっても、姫君をお(まか)せできる人などいない。

思い悩みながら年月は流れて、姫君たちはそれぞれ美しくご成長していかれる。
ただそれを毎日の楽しみにして過ごしていらっしゃった。