しばらく聞いていようと立ち止まっていらっしゃると、宮様の家来が気配に気づいてやって来た。
「八の宮様は山のお寺にお籠りでいらっしゃいます。ご伝言をお伝えいたしましょう」
と真面目そうに言う。
「そうだったのか。何もお伝えせずともよい。日程の決まった修行をなさっているのなら、お邪魔をするわけにはいかない。ただ、こうして濡れながら宇治まで参ったのに、むなしく都へ戻ることになってしまった。その悲しみを姫君たちに申し上げておくれ。ご同情していただければありがたい」
うなずいてすぐに向かおうとした家来を、薫の君はお引きとめになった。
「今聞こえているのは姫君たちの演奏だろう。ぜひお聞きしたいと思っていたのだ。またとない機会だから、しばらく隠れて聞けるような物陰はないか。弾くのをやめてしまわれたら困る。私が来ていることを申し上げるのはまだあとでよい」
あまりにご立派でお美しい貴公子なので、家来はとまどいながらお答えする。
「かしこまりました。たしかに都から人が来ているときには、たとえ身分の低い者が一人来ているだけでも、楽器はお弾きになりません。ここに姫君たちのいらっしゃることを宮様は隠したいとお考えのようで、姫君たちにもそのように言い聞かせておられるのです」
「つまらない隠し事をなさる。都の人たちはとっくに気づいて、めずらしいご境遇の姫君がいらっしゃるらしいと噂しているのに」
薫の君は笑っておっしゃる。
「案内せよ。私には浮ついた心などない。姫君たちのご境遇が気になって、素知らぬ顔ができないだけだ」
生真面目な家来としては困ってしまう。
<あとでお叱りを受けそうだけれど>と迷いながらも、垣間見できる場所にお連れした。
「八の宮様は山のお寺にお籠りでいらっしゃいます。ご伝言をお伝えいたしましょう」
と真面目そうに言う。
「そうだったのか。何もお伝えせずともよい。日程の決まった修行をなさっているのなら、お邪魔をするわけにはいかない。ただ、こうして濡れながら宇治まで参ったのに、むなしく都へ戻ることになってしまった。その悲しみを姫君たちに申し上げておくれ。ご同情していただければありがたい」
うなずいてすぐに向かおうとした家来を、薫の君はお引きとめになった。
「今聞こえているのは姫君たちの演奏だろう。ぜひお聞きしたいと思っていたのだ。またとない機会だから、しばらく隠れて聞けるような物陰はないか。弾くのをやめてしまわれたら困る。私が来ていることを申し上げるのはまだあとでよい」
あまりにご立派でお美しい貴公子なので、家来はとまどいながらお答えする。
「かしこまりました。たしかに都から人が来ているときには、たとえ身分の低い者が一人来ているだけでも、楽器はお弾きになりません。ここに姫君たちのいらっしゃることを宮様は隠したいとお考えのようで、姫君たちにもそのように言い聞かせておられるのです」
「つまらない隠し事をなさる。都の人たちはとっくに気づいて、めずらしいご境遇の姫君がいらっしゃるらしいと噂しているのに」
薫の君は笑っておっしゃる。
「案内せよ。私には浮ついた心などない。姫君たちのご境遇が気になって、素知らぬ顔ができないだけだ」
生真面目な家来としては困ってしまう。
<あとでお叱りを受けそうだけれど>と迷いながらも、垣間見できる場所にお連れした。



