野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

<いやいや、私は仏教について教えていただくために宇治(うじ)まで来たのだ。()かれて姫君(ひめぎみ)に近づくなど、本来の目的と正反対だ>
真面目な(かおる)(きみ)はすぐに思い直して、(はち)(みや)様に丁寧なご挨拶(あいさつ)をなさった。

これをきっかけにしばしばお訪ねなさるようになる。
宮様はご出家していないにもかかわらず、とても分かりやすく仏教について教えてくださるの。
知識の豊富(ほうふ)僧侶(そうりょ)は世の中にたくさんいる。
でも、身分の高い僧侶はあちこちからお呼びがかかって忙しそうだから、ゆっくりと質問できる雰囲気ではない。
かといって身分の低い僧侶は、振舞いや言葉遣いに品がない。
薫の君の場合、昼間は内裏(だいり)でお仕事をなさっているから、夕方以降にくつろぎながら僧侶とお話をなさりたい。
お相手が品のない僧侶ではふさわしくないの。

その点、八の宮様は完璧な()でいらっしゃる。
とても上品に謙虚(けんきょ)に振舞われて、()(むずか)しい説明などはなさらない。
たとえ話をまじえながら分かりやすく説明してくださる。
(さと)りが非常に深いというわけではいらっしゃらないだろうけれど、さすがは(とうと)いお生まれの方だから、物事(ものごと)の一番大切なところをつかむのがお上手なのでしょうね。

お訪ねするたびに薫の君は八の宮様に()かれていかれる。
いつもおそばに上がっていたくて、お忙しくてなかなか宇治(うじ)へ行けないときには恋しくお思いなさる。