野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

(みや)様は感心なさる。
「お若いのにめずらしい。仏教というのは、ある程度年を取ってこの世に嫌気(いやけ)の差した人が、もう来世(らいせ)に期待するしかないと思って興味を持つものだろう。(かおる)(きみ)はまだお若い上に、何事(なにごと)も思いのままにできるお立場なのだから、(ぞく)世間(せけん)の楽しみに夢中になっておられてもおかしくはない。それなのに、死んだあとのことを考えて仏教の勉強をしたいとおっしゃるとは。なんとご立派なことだ。

むしろ私など、仏様が数々の試練(しれん)を与えてくださったから今の状況になったにすぎない。もし東宮(とうぐう)交代の計画に巻きこまれていなければ、妻が若くして亡くなっていなければ、(みやこ)の屋敷が火事になっていなければ、はたしてここまで熱心に修行(しゅぎょう)していたかどうか。
しかも残りの寿命(じゅみょう)は短く、もっと仏教を理解したくても限界が見えてきている。薫の君は尊敬すべき仏教仲間だ」
そうおっしゃって文通をお始めになった。