野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

(みや)様の山荘(さんそう)に上がりますと、ときどき姫君(ひめぎみ)たちは楽器を演奏なさっているのです。宇治(うじ)(がわ)の激しい川音と競うように音色(ねいろ)が響いて、とても聞きごたえがございますよ。まるで極楽(ごくらく)浄土(じょうど)のようです」
音楽好きの阿闍梨(あじゃり)は、古めかしいほめ方をした。
上皇(じょうこう)様は微笑(ほほえ)みなさる。
僧侶(そうりょ)のようなご生活の父宮(ちちみや)に育てられた姫君は、音楽などおできにならないだろうと思いきや、おもしろいではないか。それほどご心配なら、もしご出家なさるときには私に預けていただきたいものだ」
亡き上皇様が、源氏(げんじ)(きみ)(おんな)(さん)(みや)様を(たく)してからご出家なさったことを思い出しておっしゃる。
<毎日退屈なのだから、新女御(にょうご)に加えてその姫君たちも相手にしたい>
なかなかに好色(こうしょく)な上皇様でいらっしゃるわね。