野いちご源氏物語 四五 橋姫(はしひめ)

阿闍梨(あじゃり)上皇(じょうこう)様にもお仕えしていた。
たまに(みやこ)に出るとお住まいに上がって、お(きょう)についてのご質問にお答えする。
そのついでに(はち)(みや)様のことを申し上げた。
「近ごろ八の宮様が宇治(うじ)にお移りになりまして、お(きょう)のことをお教えしておりますが、とてもご聡明(そうめい)な宮様でいらっしゃいます。ご出家(しゅっけ)なさっていないとは思えないほど仏教について深く理解なさっています。そういう運命でお生まれになった方なのでしょう。お心を落ち着けて修行(しゅぎょう)なさっているご様子などは、まさに(とうと)僧侶(そうりょ)のように拝見しております」

「ずいぶん長く仏教の勉強をなさっていると聞くが、まだ出家はしておられないのだね。『俗世間(ぞくせけん)にいる(ひじり)』と若い貴族たちが呼んでいるらしい。事情があってご出家できずにいらっしゃるのだろう。お気の毒だがご立派なことだ」
ちょうどその場に(ひか)えていた(かおる)(きみ)は、八の宮様のお話にお耳を()められた。
<私もこの世をつまらないと思ってはいるけれど、世間体(せけんてい)を気にして目立つほどの修行はできずにいる。(くや)しい過ごし方だ。出家しないままで尊い僧侶のようになる方法があるのだろうか。真似(まね)できることがあるかもしれない>
気になってお話を聞いていらっしゃる。

「もちろん出家をお望みなのですが、ちょっとした理由で実現できずにいらっしゃるようです。『かわいそうな姫たちを見捨てることができない』と(なげ)いておいででした」
話題は姫君(ひめぎみ)たちのことに移っていく。