野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

(かおる)(きみ)はそのころ十四、五歳でいらっしゃった。
まだ幼さが残っていてもおかしくないお年だけれど、考え方が大人びていて、将来はかならずご出世なさりそうな若者なの。
<もし貴族を長女の婿(むこ)にするなら薫の君がよい>
玉葛(たまかずら)(きみ)はお思いになっている。

お屋敷が近いから、玉葛の君のご子息(しそく)に誘われて薫の君が遊びにいらっしゃることもある。
その他にも求婚者がやって来ることはあるけれど、お美しさでは少将(しょうしょう)様、上品さでは薫の君がずば抜けておられる。
薫の君が特別すばらしく見えるのは、源氏(げんじ)(きみ)のお子だと思うからかしら。
本当は亡き衛門(えもん)(かみ)様のお子だけれど、世間はそれを知らないもの。
自然と尊敬され、大切に(あつか)われる若者でいらっしゃる。

若い女房(にょうぼう)たちは夢中になってほめそやす。
玉葛の君も薫の君のご立派さにはため息をついて、女房を通じて親しくお話なさる。
「亡き源氏の君のお優しかったことを思い出すたびに、恋しい気持ちをどなたに向けたらよいか分かず悲しくなるのです。夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様はご身分が高すぎて、気軽にお会いできる方ではありませんものね。大臣様は私を姉と思ってくださっているのですよ。大臣様の弟君(おとうとぎみ)でいらっしゃるあなたにも、同じように思っていただけたら」
とおっしゃるから、薫の君もそのつもりでご機嫌(きげん)(うかが)いにお越しになる。

年ごろの姫君(ひめぎみ)がいらっしゃるお屋敷だというのに、興味のあるそぶりはまったくお見せにならない。
物足りない女房たちは、気を引くようなことを申し上げて薫の君を困らせている。