野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

人事(じんじ)異動(いどう)があって、(かおる)(きみ)中納言(ちゅうなごん)におなりになった。
あの中将(ちゅうじょう)様も今では上級貴族の仲間入りを果たされた。
夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)家と紅梅(こうばい)大臣家の人たちばかりが出世していく世の中よ。

薫の君は昇進(しょうしん)のご挨拶(あいさつ)回りをなさる。
玉葛(たまかずら)(きみ)のお屋敷にもいらっしゃった。
「夫が亡くなり、子どもたちも巣立っていって、寂しくなる一方の家です。嫌がりもせずよくお越しくださいましたね。これも源氏(げんじ)(きみ)のおかげとありがたく思っております」
もう五十代におなりだけれど、お声は上品でおかわいらしいまま。

<いつまでも若々しくていらっしゃる。こういう女性だから、上皇(じょうこう)様はいまだに執着(しゅうちゃく)なさっているのだろう。今に困ったことが起きるのではないか>
薫の君は思わず心配なさる。