野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

ご長女は美人と評判で(みかど)上皇(じょうこう)様以外にも求婚者が多い。
夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様のご子息(しそく)少将(しょうしょう)様もそのおひとりよ。
雲居(くもい)(かり)がお生みになったお子で、お人柄(ひとがら)もよい。
大臣様の六男だけれど、兄君(あにぎみ)たちよりもかわいがられていらっしゃる。

玉葛(たまかずら)(きみ)にとって、夕霧大臣は弟君(おとうとぎみ)のようなものだし、雲居の雁は腹違いの妹君(いもうとぎみ)だから、少将様のことを他人(あつか)いはなさらない。
その強みを生かして少将様はまず女房(にょうぼう)たちに近づく。
あっさりと少将様の味方になってしまった女房は、玉葛の君に少将様からの伝言をお伝えする。

雲居の雁からも熱心にお手紙が届く。
夕霧大臣までもが、
「まだ軽い身分の息子ですが、(えん)のある私の子ですからお許しいただけるかと」
とお願いなさる。
玉葛の君としては、ご長女は皇族(こうぞく)と結婚させたい。
<貴族の妻にしようとはとても思えない。次女ならば、少将様のご身分がもう少し高くなったら悪くない縁談(えんだん)だと思うけれど>

玉葛の君がすぐにお許しにならないので、少将様は深刻(しんこく)に思いつめておられる。
思いつめた求婚者が何をするか分からないことを、玉葛の君はご自分の経験からよく分かっていらっしゃる。
少将様とのご結婚はありえないというわけではないの。
それでも、万が一親が許さないうちに関係が始まってしまったら、その結婚は世間から非難(ひなん)される。
「想像するだけで恐ろしい。けっして勝手な手引きなどをしてはいけませんよ」
きつく注意なさるので、女房たちはあえて仲介(ちゅうかい)役をしようとはしなくなった。