新女御様も叔母女御様も、お互いを憎むなんて軽率なことはなさらないのよ。
でも、お仕えしている女房たちのなかには意地の悪い人もいて、見苦しい騒ぎを起こしはじめた。
ご長男が心配なさっていたとおりになったと、玉葛の君はお悩みになる。
<そのうち世間の笑い者になってしまうのではないか。上皇様がどれだけ愛してくださっても、長年お仕えしてこられたお妃様たちに憎まれてはやっていけないだろう>
新女御様のことで頭がいっぱいなのに、
「ご長女を入内させなかったことを、帝はいまだにお怒りでいらっしゃるそうですよ」
などと言う人もいる。
<あちらもこちらも困ったことになった。長女の結婚は今さらどうしようもないのだから、せめて次女を内裏の女官にすれば、帝のお怒りをやわらげられるのではないか>
と、ご自分の尚侍の役職をご次女に譲ろうとなさる。
もともと引退したいとお願いなさっていたのだけれど、帝のお許しが出ないままだった。
尚侍という最上級の女官はそう簡単に代わりが見つからないもの。
<明石の中宮様にご遠慮しつつ、帝のためにしてさしあげられることとしては、これが一番だろう>
帝もお聞き入れになった。
「妃としての入内ではなくなってしまうが、娘を帝に仕えさせたいという亡き大臣の遺言を叶えてやろう。尚侍の役目を母から娘に譲ることは、ずっと昔にもあったようだから」
という理由でお許しになる。
無事にお許しが出て、妹姫君は尚侍におなりになった。
<女官としての内裏暮らしなら、お妃様たちの競争とは無関係でいられる>
玉葛の君はほっとなさる一方で、少将様のことがお気にかかる。
<母君の雲居の雁まであれほど熱心におっしゃっていたのに、結局長女は上皇様に差し上げてしまった。次女を少将様にとほのめかしてあったけれど、勝手に女官にしたことをどうお思いになるだろう>
今度はまた別のお悩みが出てくるの。
こういうときはご次男が頼りになる。
ご長男と比べて地味なお役職だけれど、大臣様たちとの交渉は慣れていらっしゃるのよ。
「次女を尚侍にせよと帝の仰せがございました。長女を上皇様と結婚させたばかりで、次女まで宮仕えさせようとするのは、世間から身の程知らずと非難されるのではないかと心配で」
と、ご伝言を申し上げさせなさる。
あくまでも「恐れ多い仰せに困っている」という雰囲気で、ご次男は夕霧大臣様にご相談なさる。
大臣様は鷹揚に賛成なさった。
「帝はご長女の入内を楽しみにしておられましたから、ご期待が外れて不愉快にお思いなのもごもっともです。この際ご次女を、女官としてでもよいから宮仕えさせなさるべきでしょう。早くご決断なされませ」
こうして夕霧の大臣様と雲居の雁ご夫妻に筋を通してから、今度は明石の中宮様にお許しをいただかれる。
それからやっと新尚侍として参内ということになった。
<夫が生きていれば、ここまであちこちに気を遣う必要はなかっただろうに>
と玉葛の君は悲しく思われる。
帝は完全にご納得はなさっていない。
美人と評判のご長女を楽しみになさっていたから、<長女ではなく次女か>と残念そうでいらっしゃる。
でもご次女は聡明な方だから、よく気の利く新尚侍としてお役目を果たしておいでよ。
でも、お仕えしている女房たちのなかには意地の悪い人もいて、見苦しい騒ぎを起こしはじめた。
ご長男が心配なさっていたとおりになったと、玉葛の君はお悩みになる。
<そのうち世間の笑い者になってしまうのではないか。上皇様がどれだけ愛してくださっても、長年お仕えしてこられたお妃様たちに憎まれてはやっていけないだろう>
新女御様のことで頭がいっぱいなのに、
「ご長女を入内させなかったことを、帝はいまだにお怒りでいらっしゃるそうですよ」
などと言う人もいる。
<あちらもこちらも困ったことになった。長女の結婚は今さらどうしようもないのだから、せめて次女を内裏の女官にすれば、帝のお怒りをやわらげられるのではないか>
と、ご自分の尚侍の役職をご次女に譲ろうとなさる。
もともと引退したいとお願いなさっていたのだけれど、帝のお許しが出ないままだった。
尚侍という最上級の女官はそう簡単に代わりが見つからないもの。
<明石の中宮様にご遠慮しつつ、帝のためにしてさしあげられることとしては、これが一番だろう>
帝もお聞き入れになった。
「妃としての入内ではなくなってしまうが、娘を帝に仕えさせたいという亡き大臣の遺言を叶えてやろう。尚侍の役目を母から娘に譲ることは、ずっと昔にもあったようだから」
という理由でお許しになる。
無事にお許しが出て、妹姫君は尚侍におなりになった。
<女官としての内裏暮らしなら、お妃様たちの競争とは無関係でいられる>
玉葛の君はほっとなさる一方で、少将様のことがお気にかかる。
<母君の雲居の雁まであれほど熱心におっしゃっていたのに、結局長女は上皇様に差し上げてしまった。次女を少将様にとほのめかしてあったけれど、勝手に女官にしたことをどうお思いになるだろう>
今度はまた別のお悩みが出てくるの。
こういうときはご次男が頼りになる。
ご長男と比べて地味なお役職だけれど、大臣様たちとの交渉は慣れていらっしゃるのよ。
「次女を尚侍にせよと帝の仰せがございました。長女を上皇様と結婚させたばかりで、次女まで宮仕えさせようとするのは、世間から身の程知らずと非難されるのではないかと心配で」
と、ご伝言を申し上げさせなさる。
あくまでも「恐れ多い仰せに困っている」という雰囲気で、ご次男は夕霧大臣様にご相談なさる。
大臣様は鷹揚に賛成なさった。
「帝はご長女の入内を楽しみにしておられましたから、ご期待が外れて不愉快にお思いなのもごもっともです。この際ご次女を、女官としてでもよいから宮仕えさせなさるべきでしょう。早くご決断なされませ」
こうして夕霧の大臣様と雲居の雁ご夫妻に筋を通してから、今度は明石の中宮様にお許しをいただかれる。
それからやっと新尚侍として参内ということになった。
<夫が生きていれば、ここまであちこちに気を遣う必要はなかっただろうに>
と玉葛の君は悲しく思われる。
帝は完全にご納得はなさっていない。
美人と評判のご長女を楽しみになさっていたから、<長女ではなく次女か>と残念そうでいらっしゃる。
でもご次女は聡明な方だから、よく気の利く新尚侍としてお役目を果たしておいでよ。



