野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

「亡き源氏(げんじ)(きみ)六条(ろくじょう)(いん)女君(おんなぎみ)たちだけの音楽会をなさったとか。すばらしい会だったと夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)が申していた。源氏の君の(あと)()いで風流なことをできる人というのはもういないだろうね。女君たちでさえそれほど立派な人が集まっていたのだから、どのような会を(もよお)されてもすばらしいものになって当然だったわけだ」
とおっしゃりながら、上皇(じょうこう)様は楽器の調律(ちょうりつ)をさせなさる。

(そう)は新女御(にょうご)様に、琵琶(びわ)(かおる)(きみ)にお与えになって、上皇様は和琴(わごん)をお()きになる。
<少し前まで上達途中の音色だったが、すっかりお上手におなりになった>
薫の君は女御様の音色に驚かれる。
上皇様がよくお教えなさったのでしょうね。
現代的なよい音色で、歌の伴奏(ばんそう)も合奏も上手にお弾きになる。
<欠点のない方らしい。ご器量(きりょう)もさぞかしお美しいのだろうな>
と、やはり気になってしまわれる。

こうして新女御様のおそば近くに上がる機会は多いけれど、もちろん薫の君は()()れしい態度などお取りにならない。
ただ、ときどきは失恋をさりげなく(なげ)かれる。
それを女御様がどうお思いになっているかは、さぁ、どうかしら。