野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

上皇(じょうこう)様の新女御(にょうご)様へのご愛情は日に日に増していく。
七月にはご懐妊(かいにん)なさった。
つわりでやつれたお姿はいっそう魅力(みりょく)(てき)で、あれほどたくさんの求婚者がいらしたのもごもっともなお美しさよ。
これほどの姫君(ひめぎみ)を世間の男は放っておかないわよね。

上皇様は一日中音楽会を(もよお)される。
(かおる)(きみ)も呼ばれて新女御様のお部屋近くまで上がらせていただく。
女御様の楽器の音色を聞けることがうれしくも切なくもある。
以前『(うめ)()』という歌を薫の君がお歌いになったとき、和琴(わごん)を見事に合わせた女房も会に参加している。
その音色を聞くとあのころが思い出されて、お胸がざわつくの。