ぞっとするほど深く恨んでお嘆きになるので、女房もお返事がしにくい。
「何日か前、ご姉妹で囲碁をなさっているところを垣間見したのだ。夢のようだった。あのくらいでよいからまたお姿を拝見したい。この先、私は何を頼りに生きたらよいのだろう。きっとすぐに死んでしまうから、そなたと話をするのもあと何回かだろうな。今思うと、恋に苦しんでいるうちはまだよかった」
女房のとなりに横たわったまま、切々とお気持ちを吐き出される。
女房はお気の毒とは思うものの、何ともお返事のしようがない。
「そなたも知っているかもしれないが、玉葛の君はご次女の姫君となら結婚を許してやろうとお考えらしい」
ちっともうれしくなさそうにおっしゃる。
<お姿を見てしまわれたのなら、ますます諦めることはおできにならないだろう>
納得しながらも、女房は厳しい顔をつくった。
尊い上皇様とのご結婚が決まった以上、他の求婚者に優しい顔をするのは危険だもの。
「まぁ、垣間見なんて失礼なことをなさったのですか。姫君がお聞きになったらますますあなた様をお嫌いになるでしょう。私だってご同情する気持ちはなくなってしまいました。ひどいではありませんか」
わざと怒っているように申し上げたけれど、少将様は開き直っておっしゃる。
「そなたの同情など今さらどうでもよい。もうすぐ私は死ぬのだから、そなたの機嫌を取る必要はないのだ。いっそあのときお部屋のなかへ入れてもらえばよかった。囲碁でお負けになっていたが、私がおそばにいれば、姉姫君が勝てるような手をお教えしたのに。
それにしても、人より劣った男の負けん気は、意味がないどころか自分を傷つけるだけだな」
「結局は立場の強い方がお勝ちになるのです。誠意でどうにかなるというお話ではありません」
できるだけ突き放した言い方をする。
「なぁ、おい、頼むよ」
女房の腕を引いて少将様はお願いなさる。
「同情してくれよ。私の命はそなたにかかっている」
ご冗談のようにおっしゃるけれど泣いておられる。
そのまま女房の部屋で夜をお明かしになった。
「何日か前、ご姉妹で囲碁をなさっているところを垣間見したのだ。夢のようだった。あのくらいでよいからまたお姿を拝見したい。この先、私は何を頼りに生きたらよいのだろう。きっとすぐに死んでしまうから、そなたと話をするのもあと何回かだろうな。今思うと、恋に苦しんでいるうちはまだよかった」
女房のとなりに横たわったまま、切々とお気持ちを吐き出される。
女房はお気の毒とは思うものの、何ともお返事のしようがない。
「そなたも知っているかもしれないが、玉葛の君はご次女の姫君となら結婚を許してやろうとお考えらしい」
ちっともうれしくなさそうにおっしゃる。
<お姿を見てしまわれたのなら、ますます諦めることはおできにならないだろう>
納得しながらも、女房は厳しい顔をつくった。
尊い上皇様とのご結婚が決まった以上、他の求婚者に優しい顔をするのは危険だもの。
「まぁ、垣間見なんて失礼なことをなさったのですか。姫君がお聞きになったらますますあなた様をお嫌いになるでしょう。私だってご同情する気持ちはなくなってしまいました。ひどいではありませんか」
わざと怒っているように申し上げたけれど、少将様は開き直っておっしゃる。
「そなたの同情など今さらどうでもよい。もうすぐ私は死ぬのだから、そなたの機嫌を取る必要はないのだ。いっそあのときお部屋のなかへ入れてもらえばよかった。囲碁でお負けになっていたが、私がおそばにいれば、姉姫君が勝てるような手をお教えしたのに。
それにしても、人より劣った男の負けん気は、意味がないどころか自分を傷つけるだけだな」
「結局は立場の強い方がお勝ちになるのです。誠意でどうにかなるというお話ではありません」
できるだけ突き放した言い方をする。
「なぁ、おい、頼むよ」
女房の腕を引いて少将様はお願いなさる。
「同情してくれよ。私の命はそなたにかかっている」
ご冗談のようにおっしゃるけれど泣いておられる。
そのまま女房の部屋で夜をお明かしになった。



