野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

玉葛(たまかずら)(きみ)はいつまでも若々しくてお美しい。
とても三十歳近いお子がいらっしゃるようには見えないわ。
上皇(じょうこう)様は昔の(かな)わなかった恋を思い出されて、玉葛の君に会う口実(こうじつ)として、ご長女との結婚をお望みになっているの。

でも、ご長男とご次男は、このご結婚に反対でいらっしゃる。
「やはりつまらない気がいたします。世間も『なぜ(みかど)(くらい)をお()りになった上皇様のところへ』と疑問に思うでしょう。たしかにこの世でもっともお美しい方ではありますが、ご身分の(さか)りは過ぎてしまわれた方です。いっそ東宮(とうぐう)様へ入内(じゅだい)させなさってはいかがですか」
おっしゃるとおり、東宮様の方がご年齢も姫君(ひめぎみ)にふさわしい。

「それは私も考えてみたのだけれど、東宮様のご愛情は、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の姫君が独り占めしていらっしゃるのですよ。他のお(きさき)様は競争相手にもならないほどだというから、そんなところへ後見(こうけん)役のいない姫を入内させるのは気の毒でしょう。人に笑われることもあるのではと心配になってしまいます。
亡くなった父君(ちちぎみ)がいてくださいましたらね。その先ご愛情がいただけるかどうかは姫のご運次第(しだい)だけれど、少なくとも入内当初は華やかに体裁(ていさい)を整えてあげられたのに」
それを言われてしまうと兄君たちも悲しくて、どなたも残念にお思いになる。