野いちご源氏物語 四四 竹河(たけかわ)

翌朝、(かおる)(きみ)からご三男にお手紙が届いた。
「昨夜ははしゃぎすぎてしまいました。お屋敷の皆様がどうお思いになったか心配です」
ご三男が母君(ははぎみ)玉葛(たまかずら)(きみ)にもお見せするだろうと、女性でも読みやすい平仮名で書かれている。
お手紙の最後には、
「『竹河(たけかわ)』は姫君(ひめぎみ)を思いながら歌ったのですが、お気づきになりましたか」
とある。
『竹河』には恋しい女性に近づきたいという歌詞があるの。

ご三男は母君のところにお手紙を持っていかれた。
「字もお上手でいらっしゃる。まだお若いというのに。幼いころに父君(ちちぎみ)を亡くされた上、母宮(ははみや)様はそれほど教育熱心ではあられないようだったけれど、人より立派に育つ運命だったのでしょうね。そなたもこの見事な字を見習いなさい」
お返事はご三男がお書きになる。
「急いでお帰りになってしまって、母も女房(にょうぼう)たちも残念そうでした。近づきたいとおっしゃいますけれど、あんなにすぐにお帰りということは本気ではいらっしゃらないのでしょう」
たしかに子どもっぽい字だったわ。

これをきっかけに薫の君はご三男と仲良くなって、お部屋に遊びにいっては姫君への恋心を(うった)えなさる。
少将(しょうしょう)様が想像なさったとおり女房たちは薫の君に夢中になった。
ご三男は少年らしい素直なお心で、
<こんな方が姉君(あねぎみ)婿君(むこぎみ)になってくださったら>
と願っていらっしゃる。