野いちご源氏物語 四三 紅梅(こうばい)

紅梅(こうばい)大臣(だいじん)様は、ご長女だけでなくご正妻(せいさい)まで内裏(だいり)に上がってしまわれてお寂しい。
ご次女の姫君(ひめぎみ)姉君(あねぎみ)といつも一緒にいらっしゃったから、お部屋ががらんとしてしまったような気がしていらっしゃる。
これまで、(みや)御方(おんかた)も含めて三人の姫君は仲良くなさっていたの。
一緒のお部屋でお休みになることもあったし、習い事やちょっとした遊びでは宮の御方をお師匠(ししょう)のようにしてご姉妹は(した)っていらっしゃった。

宮の御方はひどく恥ずかしがりやで、実の母君(ははぎみ)である真木柱(まきばしら)(きみ)にさえ、お顔を見られるのをお避けになる。
いくら(みや)様の姫君でも極端(きょくたん)すぎるのではと思われそうなところだけれど、実は愛嬌(あいきょう)があって、暗い感じではいらっしゃらないの。

こうして着々(ちゃくちゃく)とご姉妹の結婚相手を決めていかれると、紅梅の大臣様は宮の御方をないがしろにしているようで申し訳なくお思いになる。
「私の娘ばかりを優先しているわけではないのです。宮の御方のご結婚については、母親のあなたがお決めになったことに従うつもりです。こちらの娘と同じようにお世話いたしますからね」

そのことについては、真木柱の君も困っていらっしゃる。
「ひどく内気(うちき)な姫で、結婚などまったくお考えではないようなのです。無理に結婚させるのも心苦しいですから、運命に(まか)せて、独身のままだとしても私が生きている限りはお世話しようと思います。問題は私が死んだあとですが、たとえ出家(しゅっけ)なさってでも、(みや)様の姫として世間から笑われないような生き方をしてくだされば」
ご将来を想像なさると心配で泣いてしまわれた。
「おっとりとして優しい、よい姫なのですけれど」
涙声で弱々しくおっしゃる。