野いちご源氏物語 四三 紅梅(こうばい)

ご次女の姫君(ひめぎみ)もお美しい。
上品で清らかなところは姉君(あねぎみ)以上でいらっしゃる。
<貴族と結婚させるのは惜(お)しい。皇族、それも匂宮(におうのみや)様が求婚(きゅうこん)してくだされば>
と紅梅(こうばい)の大臣(だいじん)様はお思いになる。

真木柱(まきばしら)の君(きみ)とのご再婚後に生まれた若君(わかぎみ)は、内裏(だいり)で見習いとして働いている。
心構えがしっかりしていて、賢(かしこ)そうな顔立ちのお子よ。
匂宮様はこの若君を内裏でお見つけになると、近くへ呼んでおしゃべり相手になさるの。
ある日、
「『弟をかわいがるだけでは気がすまない』と紅梅大臣に伝えよ」
とおっしゃった。

<これはうまくいくかもしれない>
大臣様はうれしそうなお顔をなさる。
「せっかく入内(じゅだい)させても、お妃(きさき)様同士の厳しい競争に負ければ埋(う)もれてしまう。大切に育てた自慢の娘なのだから、匂宮様に差し上げて魅力(みりょく)を分かっていただいた方がよい。それに匂宮様が婿君(むこぎみ)として私の屋敷に出入りなされば、美しいお姿に命も延(の)びるような気がするだろう」
ご次女は匂宮様へとお胸のうちで決めて、まずはご長女の入内の準備をお急ぎになる。

<私の代(だい)でこの家から中宮(ちゅうぐう)が出るかもしれない。上皇(じょうこう)様が帝(みかど)であられたころ、亡き父君は私の姉君(あねぎみ)を入内させなさったが、中宮の位(くらい)にお就(つ)けすることは叶(かな)わなかった。源氏(げんじ)の君(きみ)が後見(こうけん)する女御(にょうご)様が中宮にお決まりになったのだ。あのときの父君のお嘆(なげ)きようは今でもありありとまぶたに浮かぶ。もし長女が中宮になれたら、あの世の父君にもよろこんでいただけるだろう>
と、祈りながら入内させなさった。
東宮様はとてもお気に召されたようよ。

でもまだ安心はできない。
「後宮(こうきゅう)でのお付き合いに慣れないうちは、しっかりとした後見役が付き添っているべきですから」
真木柱(まきばしら)の君(きみ)は血のつながらないご長女のために後見役を買って出られた。
内裏に上がって、実の子のように大切にお世話しておあげになる。